日本学術振興会 人文・社会科学振興のためのプロジェクト研究事業V−3
「文学・芸術の社会的媒介機能」
文学・芸術の社会的統合機能の研究
LAC
Literature, Art and Community

English version

更新履歴

お知らせ(2009年3月31日)

本プロジェクトは2009年3月をもちまして、活動を終了いたしました。
なお、活動の履歴・詳細は各ページにてご覧いただけます。
ここまで本プロジェクトに関心を示してくださった方々、ご協力ご参加をいただいた多くの皆様に感謝申し上げます。

代表 山田広昭

 芸術はつねに、一定の規模を越えた人間の集団をひとつの単位へと結集させるのに、大きな役割を果たしてきました。このような社会的統合に際しての媒介機能は、近代社会においてとりわけ重大な政治的意味をもっていると言えるでしょう。近代のもっとも重要な政治的単位である国民(ネイション)が、既存の共同体を越えて成員同士を結びつける何らかの紐帯によって存在しているからです。多くの場合、その紐帯は芸術的感性の共通性、すなわち広い意味での美学的体験の共有に基盤を置くものでした。国民国家の成立がほぼつねに「国民文学」の創出をともなったことにも見られるように、美学的体験の比類なき対象は、言語芸術である文学でした。そしてこの流れに即して、近代以来の人文科学研究は、「フランス」文学や「ドイツ」文学というように、「国民文学」「国民文化」に対応する形で編成されてきたのです。

 しかし、このような文学や芸術の機能は、20世紀以降、映画のような革新的技術手段による新しい芸術の誕生や、国民国家の境界を飛び越えるインターネットのようなコミュニケーション・テクノロジーの発展、そして世界規模での資本の展開によって助長された芸術の産業化によって、大きな変貌を遂げています。

 そこで、この研究プロジェクトではまず、近代の国民国家の形成プロセスにおいて芸術が果たしてきた、美学的紐帯としての一般的な役割をあらためて検討していきます。そして、現代世界のグローバリゼーションの波の中で新たな公共性を形作る、芸術の力と役割とを探っていきます。